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国際革命文庫  9

第四・五回世界大会テーゼ
国際革命文庫編集委員会訳

4

電子化:TAMO2

「スターリニズムの抬頭と衰退」
――第四インターナショナル第4回大会テーゼ――

第四章 第四インターナショナルの役割と未来

47 第四インターナショナルはソ連共産党左翼反対派と第三インターナショナル・ボルシェヴィキ・レーニン主義派から出てきた。その起源は、レーニンの綱領、レーニン主義的戦略戦術、十月革命とヨーロッパ・アジアの革命の敗北から得た基本的教訓を、スターリンの修正に反対して、擁護することにあった。第四インターナショナルそしてそれに先行したソ連左翼反対派と第三インターナショナル左翼反対派はまさしく、「一国社会主義」論、「四民ブロック」理論、「亀の歩み」や「七里靴のスピード」の社会主義建設論、改良主義的官僚・農民諸政党・植民地民族ブルジョアジーとの無原則的同盟の日和見主義的戦術、極左的な「社会ファシズム」戦術に対する闘争から誕生した。トロツキスト運動の強さは、その基本的起源のためである。労働運動史上はじめて、かくべつ正確な綱領・戦略・戦術をもった幹部の協定にもとづいてひとつの国際組織が建設された。けれども同時にこの力には大きな弱点をもつ危険(それは労働運動から切り離されたからである)やトロツキスト組織がスターリン主義的政策のマルクス主義批判家の討論クラブ、アカデミック派閥に転落する危険性が横たわっていた。第四インターナショナルの創立者たち、とくにレオン・トロツキーはこの危険をよく自覚し、はやくも一九三三年にかれはとくに、トロツキストの中核を大衆運動に根づかせること、なくなっていた大衆運動とのつながりを建てなおして新しい世代のトロツキスト労働者幹部を選抜することにあらゆる努力を払った。合衆国のようなある国々では第二次世界大戦以前にすでにこの任務は大きく進歩をとげた。ヨーロッパやアジアそしてラテン・アメリカ諸国の大部分においては、第二次世界大戦の以前および大戦中にこの任務を解決することができなかったが、それはスターリニストのテロル、帝国主義とファシストの処刑、わが指導部と主なカードルの連続性の欠如、そしてなかんずく労働運動の世界的退潮のためにわが運動が打撃をこうむったためである。一九四三年にはじまった新しい革命的高揚の過程ではじめて、トロツキスト組織が入らねばならなかったこの新しい段階「過渡的綱領」を実際に適用する段階を国際運動は十分に意識するに至った。第四インターナショナルの第三回世界大会およびIEC〔国際執行委員会〕第一〇回総会からトロツキスト組織の多数派は、各国の大衆運動にねざし、その指導部を取るための具体的な方法論を習得した。

48 第三インターナショナルの内部で国際共産主義運動スターリニスト派に対する分派闘争から第四インターナショナルが生れたという理由によって、トロツキスト運動においてスターリニズムの裏切りと犯罪に対する闘争を主要な役割とみる偏向逸脱が生じてきた。ところが実際には第四インターナショナルの役割はそれとちがったものだったし、今もちがっている。トロツキスト運動の発端から現代の社会的力学の最も意識的表現たる永久革命論のための闘争があったが、それは偶然ではなかった。第四インターナショナルは、改良主義であれ、中間主義であれ、スターリニストであれ、その他であれ、特殊な利己的な官僚主義的ないし民族的に狭隘な利害を代表するような労働者指導部一切に反対する。第四インターナショナルは、ブルジョア民主主義であれソ連国家ないしユーゴスラビア国家であれ、労働者の行動をすでに獲得した地位の防衛に限るような試みに対しては一切反対する。第四インターナショナルは国際プロレタリアートの利害総体と、その歴史的目標(つまり社会主義革命の世界的実現、共産主義社会の世界的建設)を代表する。第四インターナショナルの綱領を同化した労働者指導部の建設をぬきにしてはこの目標を決定的に達成することができない。なぜならば、社会主義革命はそれを遂行する階級の前衛に高い水準の意識を要求するという点で、他のどの革命とも異っているからである。第四インターナショナルが労働者の前衛や大衆を自己の綱領や組織に獲得しようとしているが、それは現実の大衆運動に自己を敵対させることによってではなく、自らそれに統合し融合し、自己の政治的実際的介入を通じて、大衆運動の前進と下部大衆内の指導的幹部の選抜を助けることである。

49 その特殊な成立事情――第一・第二・第三のインターナショナルとちがって第四インターナショナルは労働運動の上げ潮期ではなく退潮期に成立した――によって、結果的に言って第四インターナショナルの組織の成長テンポは緩慢で、一九四三年に上げ潮が開始したときには第四インターナショナルの弱体性は決定されていた。この事実およびとくに西ヨーロッパ諸国の革命上昇の制約性力ら、第四インターナショナルは世界のたいていの諸国でこの高揚の指導的勢力になることができなかった。それは逆にこの高揚を統制しチェックし中止させようとするソ連官僚のマヌーバーに有利となった。けれども多くの国でしっかりしたトロツキスト指導部・幹部が選りぬかれた。この理由から第四インターナショナルは次の上げ潮の段階に入っている。そして第三次世界大戦を迎えたとき一九三九年のときよりはるかに強力な組織をもっているだろうし、多くの国で自己の綱領の回りに真実の革命的指導部を結集するもっと重大な機会をつかむであろう。

50 スターリニズムの抬頭が始ったのは、ソ連官僚の保守的利害に反対して、インターナショナルとソ連プロレタリアートの真実の利害を体現していたソ連内左翼反対派、国際左翼反対派とスターリニスト官僚との間で、し烈な闘争が展開されてからである。国家機構(世界最強の)がトロツキストを粉砕しようとしたにもかかわらず、この時期にトロツキスト運動を樹立したひとにぎりの意識的革命家は世界のほとんどの国で、クレムリンの偽造したものとはちがったレーニン主義的綱領全体を守っただけではなく、それを若い世代に伝えた。さまざまな度合ではあるが、スターリニズムの衰退によって全世界でトロツキスト運動の上昇に有利な情況が開かれた。革命的高揚の力の直接の結果、スターリニズムが衰退した国々ではすべて、トロツキズム、トロツキーの思想、トロツキストの綱領の正しさははっきりと確証されている。だがこの確証からそれらが十分利益をひきだすかどうかは実際にはわれわれの組織の組織上の戦術的柔軟性いかんにかかっている。ソ連や衛星諸国では、スターリニスト指導部のあいだに分裂、不確信、急激な路線転換、狼狽に特徴づけられ、革命的高揚の前期ないし開始期にあたる現段階は労働運動の内部にわれわれの思想と組織が再び登場するのに有利となりつつある。この再登場が意識的組織的な形態をとって行われるか、それともはじめはより複雑で混乱した形態をとるかは、第四インターナショナルがわが思想を採用するように機構内のわずかな裂けめでも利用する能力をもっているか否かにかかっている。次の段階、戦争前夜ないし戦時中に革命的上げ潮が近づくところの国々については、組織的影響を拡大したり、突破したりするため、インターナショナルは与えられた機会を最大限に利用するようとくに武装されている。スターリニストの指導的サークルは政治問題を解決できないため、ソ連に最近起きた事件のため、かれらの中で混乱が生じているが、さきの課題をもったわれわれはそれによって大いに助けられるだろう。スターリニズムを揺がしつつある世界的危機にわれわれが介入する意義は次のように要約できる。スターリニズムの危機にいま揺がされ、今後もますます揺がされる諸国共産党の下部にいて、共産主義の大義名分のために働く幹部や正直な革命的闘士たちを最大限とり戻すこと、新しいプロレタリアートの革命的指導を保証すること、既存の勝利した革命の防衛や、革命的時代の持続や大激動からみて最小限の犠牲でもってプロレタリアートの勝利を確保することこれである。現実の大衆運動へのわが勢力の統合について、もし原則上の非妥協的首尾一貫性と戦術上の柔軟性とをうまく結合できたら、われわれはスターリニズムの衰退と没落を第四インターナショナルおよび世界革命の勝利と一致させるだろう。


(原註1)
 「ソ連における新しい革命の高揚は、明らかに社会的不平等ど政治的抑圧に対する闘争の旗のもとにはじまるだろう。スタハノフ主義を打倒せよ! ソ連寡頭支配者とその位階制を打倒せよ! すべての労働形態にたいする賃金をより平等化せよ!
 「労働組合と工場委員会の自由、集会の権利と出版の自由のための闘争は、ソヴィエト民主主義の復活と発展のための闘争へと展開するだろう。
 「官僚は、階級的機関としてのソヴィエトを普通選挙権――ヒットラー・ゲッベルス流の――の作り話にすりかえてしまった。ソヴィエトにその自由な民主的形態ばかりでなく、その階級的内容を回復させてやることが必要である。以前ブルジョアジーとクラークがソヴィエトに入ることをゆるされなかったように、いまも官僚と新寡頭支配者をソヴィエトからたたき出すことが必要である。ソヴィエトには、労働者、集団農場のひらのメンバー、農民、および赤軍兵士の代表しか入る余地はない。
 「ソヴィエトの民主化は、ソヴィエト諸党を合法化することなしには不可能である。労働者と農民は、彼ら自身の自由な投票によって彼らはどの政党をソヴィエト政党とみなすか示すであろう。
 「生産者と消費者の利益のために、上から下まで計画経済を修正せよ! 工場委員会は生産管理の権利をとりかえさねばならない。民主的に組織された消費者協同組合こそが生産物の品質と価格を統制しなければならない。
 「そこに働く労働者の意思と利益にしたがって集団農場を組織しなおせ!
 「官僚の反動的な国際政策を排して、プロレタリア国際主義を樹立せよ! クレムリンの外交文書を全部公開せよ! 秘密外交を打破せよ!
 「テルミドール官僚が演出したいっさいの政治裁判を、完全な公開、公開論争、清廉をもって再審せよ。デッチ上げを組織したものどもには適切な刑罰を処すべきである。
 暴力と偽造によって自己を維持する官僚制を打倒することなしにはこの綱領を実行することは不可能である。」(「過渡的綱領」からの抜粋)
 それはソ連に居住しているすべての少数民族の(脱退を含む)民主主義的自決権の採用を要求し、ウクライナ、白ロシア、エストニア、リトワニアの独立社会主義共和国のために闘うであろう。

 (原註2)
 これも過渡的綱領が意味するものである。
 「ただ被抑圧階級の勝利的反乱のみが、ソヴィエト体制を復活させ、それの社会主義への発展を保証することができる。ソ連大衆を反乱にむかってみちびきうる党はただ一つしかない――それは第四インターナショナルの党である。(「過渡的綱領」からの抜粋)

(原註3)
 略奪、賄賂、官僚主義などとたたかうキャンペーン

 〔『フォース・インターナショナル』一九五八年冬季号、『エデューケーション・フォア・ソシアリスツ(社会主義者教育)』――特集「世界スターリニズムの発展と分解」一九七〇年三月〕


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