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国際革命文庫  10

トロツキズム入門
レオン・トロツキー
エルネスト・マンデル

国際革命文庫編集委員会 訳

電子化:TAMO2

:文中、傍点は下線にしました。

●参考サイト
「トロツキーライブラリー」
「トロツキー研究所」
「日本共産党を考えるネット」

トロツキズム入門
まえがき


目次

 まえがき
 今日の共産党宣言            レオン・トロツキー
 ロシア革命の三つの樋念         レオン・トロツキー
 スターリニズムとボリシェヴィズム    レオン・トロツキー
 トロツキズム批判にたいする反論     エルネスト・マンデル
 トロツキーのマルクス主義
  (トロツキズム批判にたいする再反論) エルネスト・マンデル
 トロツキー文献案内


まえがき

 青年労働者や学生の諸君がこれから革命理論としてのトロツキズムを学ぶための入門となるように本書は編集された。本書に収録されている五つの論文はそれぞれマルクス主義の理論的著作として水準が高く、決して入門と名付けたからといってやさしい政治論文ではない。入門だからきっとやさしいだろうと期待したら裏切られるかも知れない。しかし、マルクス、エンゲルス、レーニン、トロツキーなど革命家の著作を直接詠むことが、マルクス主義を理解するもっともよい方法であって、これにまさる学習方法はない。“マルクス主義者”たちによる解説はそれはそれなりに教育的、啓蒙的役割をはたすが、革命の理論は実践との相互の関係が決定的に重要なのであって、その点では偉大な革命的実践家であったマルクスやレーニンやトロツキーの著作は、解説というフィルターを通さずに直接に学ぶことが、もっともよくその著作の真意をくみとる道である。解説はあくまで著作の真意を理解しやすくするための助けとなるような役割であって、著作にかわることはできない。
 本書によってトロツキーの革命の理論にほんとうに入門できたかどうかは、読者自身が本書読了後に決定することである。本書はトロツキーとトロツキズムに関する膨大な論文のうちのまったくほんの断片にすぎない。したがって、トロツキズムを自らのものとするためには本書は実質の内容上ではまったく微々たるものである。本妻はその意味で“呼び水”である。本書をきっかけとして、読者が壮大なトロツキーの理論体系に挑戦してほしい、そういう意図で本書は入門と名付けられた。

 トロツキズムとはレオン・トロツキーの革命理論である、こういういいかたは同義反復にすぎず、なんら内容的に規定したことにはならないであろう。それではトロツキズムとは何か? この答は本書の「ロシア革命の三つの概念」と「ボリシェヴィズムとスターリニズム」のふたつの論文があたえてくれるであろう。トロツキーは自らの思想と理論をマルクスやレーニン、そしてスターリンとの関係のなかで歴史的に位置づけている。「今日の共産党宣言」とあわせて、本書の三つのトロツキーの論文は、トロツキー自身によってトロツキズムを歴史的に位置づけたものであり、トロツキズムへの入門として格好のテキストといえよう。
 この三論文によって読者はまずわがトロツキズム運動の歴史的連続性を理論と実践のうえでみてとることができ、今日のわれわれの歴史的な位置が把握される。青年が自らの生きる時代をどのような歴史的時代としてとらえ、政治的にめざめるかは人生にとって決定的な契機を形成するのであり、したがってトロツキーのこの三論文は青年のための政治的著作である。
 エルネスト・マンデルによる二つの論文はトロツキズムを防衛するために捧げられている。マンデルは第四インターナショナルの指導者であり、マルクス主義の理論家として抜きんでた存在である。イギリスのニューレフト・レビュー誌において、ニコラス・クラッソという人物がトロツキーを批判する論文をのせた。マンデルはすぐ反批判をかき、クラッソはさらに二の矢の批判をかき、マンデルがまたその批判に反論する、という同誌上での論争が展開されたが、本書にはマンデルの反批判と再反批判とのふたつの論文を収録した。政治上、理論上の見解をもっともよく知ることのできるのは、このような論争形式をとった著作である。レーニンやトロツキーの著作のほとんどはこの論争形式である。したがってマンデルの反批判はトロツキズムとは何かを、トロツキズムにくわえられた批判、非難、中傷、ひぼうにこたえ反駁することを通じて,はっきりとしめしており、これからトロツキズムを学ぼうとするものにとって有益なオリエンテーションとなろう。クラッソのトロツキー批判そのものが左翼中間主義者による典型的な批判であって、このような典型的トロツキズム批判は日本の新左翼諸派やスターリニスト、社会民主主義者によるトロツキズム批判と同一の内容をもったものであり、マンデルの反批判はそれゆえ、われわれのイデオロギー上の、理論上の党派闘争の内容をもつものである。
 トロツキーの理論的業績はマルクスやレーニンと匹敵する壮大なもので、およそ人間社会の全分野における問題をトロツキーは扱っている。その著作量はマルクスやレーニンをしのぐであろう。このうち日本語で出版されているのは一部分である。しかし、一九六○年以後はそれ以前にくらべてトロツキーの著作の出版はいちじるしく盛んとなり、七○年代はまた新しいトロツキズム紹介の時代に入ったといえる。したがって、トロツキーの最重要文献はほぼ日本語で読めるようになってきており、本書を契機として、多くの青年がトロツキズムを学びとることに挑戦することを期待したい。
     一九七四年一二月
          ――《国際革命文庫》編集委員会――


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