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##戦後のドル支配の確立と崩壊##

 以下戦後のドル支配の確立と崩壊の過程を大きく四つの時期にわけてみてみよう。
@、一九四六〜四九年はドル支配の確立期。
A、五〇年代(一九五〇〜五八、九年)は安定期
B、六〇年代(一九六〇〜六八年)ドル危機の開始から危機の深化の時期
C、七〇年代はドル支配の崩壊の時期、ということができる。
 まず四六年〜四九年は、世界経済におけるアメリカの絶対的優位が最も典型的にあらわれた時期であり、国際収支は全体としても黒字であった。貿易収支は年平均約六九億ドルにも達し、貿易外収支の受取超過を加えた民間経常収支は年平均約八〇億ドルという巨額の黒字を示した。政府借款および贈与、軍事支出を含めた政府対外支出は年平均六一億ドルであった。資本流出はほんのごくわずかであったから、この時期はアメリカ帝国主義の国際的財政支出をとおしたドル支出は、ほぼ基本的にアメリカに還流したということができる。結局、アメリカ独占資本の輸出は、アメリカ自身の対外ドル援助によって支えられ増大していったのだということが明らかである。また四六〜四九年の国際収支の受取合計七〇億ドルのうち五二億ドルを金で受け取っておりこの時期、金はなおアメリカに集中していたのてある。
 この段階の資本主義世界の工業生産に占めるアメリカの比重は、五六・四% (一九四八年)と半分以上であり、総輸出に占めるシェアは三二・五%(一九四七年)と三分の一近くである。アメリカ経済の輸出依存度(国民総生産に対する輸出額の割合)は一九四七年)と三分の一近くである。が、アメリカ経済の輸出依存度(国民総生産に対する輸出額の割合)は一九四七年で六・一%、一九四八年では四・八%にすぎない。
 それでも一九三六〜四〇年平均の輸出依存度三・五%にくらべれば高くなっている。ちなみに、アメリカの輸出依存度は戦後一貫して四%から五%で推移している。
 この時期の特徴として二つの点を指摘しておかなければならない。
 一つは、一九四八年のマーシャル・プラン(ヨーロッパ経済復興計画)をとおして、それ以前のソ連・東欧を含む無差別的援助から、明確に対労働者国家圏に対抗した、「反共軍事戦略体系」の一環として対外軍事・経済「援助しの体制が再編されたということである。
 と同時に、これをとおしてヨーロッパ経済の一定の“組織化”がはかられたという点に留意しておかなければならない。マーシャル・プランはアメリカのヨーロッパに対する援助の前提として、ヨーロッパ域内協力体制をつくりあげることを要求した。かくして一九四八年四月に西ヨーロッパ一七ヵ国により対米援助受け入れ機関として「ヨーロッパ経済協力機構」(OEEC)が組織され、一九五〇年九月には「ヨーロッパ決済同盟」(EPU)が結成される。そして一九五九年一月のEECの発足にいたるのである。このヨーロッパ経済の一定の“組織化”は戦後の国際通貨体制=IMF体制の基礎となった管理通貨制にもとづく、いわゆる「国家独占資本主義体制」とともに、戦後の資本主義経済が国家的規模においても、地域的にも一定の“組織化”なしには再建されえなかったことを示している。対外ドル援助の体制とともに、この点でも戦後のトル支配は上から政治的に組織された側面を強くもっていたのである。

第一表 アメリカの国際収支(流動性収支) 単位 100万ドル

1946

1947

1948

1949

1950

1951

1952

1953

1954

1955

1956

1957

1958

1959
民間経常勘定:
 商品輸出
 商品輸入


11,707
-5,073


16,015
-5,979


13,193
-7,563


12,149
-6,879


10,117
-9,108


14,123
-11,202


13,319
-10,838


12,281
-10,990


12,799
-10,354


14,280
-11,527


17,379
-12,804


19,390
-13,291


16,264
-12,952


16,282
-15,310

  貿易収支
 サービス収入
 サービス支払

6,634
2,876
-1,308

10,036
3,586
-1,580

5,630
3,394
-1,759

5,270
3,391
-1,861

1,009
3,449
-2,063

2,921
4,271
-1,300

2,481
4,263
-1,533

1,291
4,049
-2,630

2,445
4,356
-2,654

2,753
4,927
-3,056

4,575
5,739
-3,486

6,099
6,374
-3,763

3,312
6,055
-4,053

972
6,400
-4,343

  サービス収支
 民間送金

1,568
-650

2,006
-669

1,635
-683

1,530
-521

1,386
-444

1,971
-386

1,730
-417

1,419
-476

-,702
-486

1,871
-444

2,253
-530

2,611
-543

2,002
-540

2,057
-575

 民間経常収支
民間資本勘定:
 アメリカ資本,純
 外国資本,純1)

7,552

-413
-347

11,373

-987
-75

6,582

-906
-173

6,279

-553
83

1,051

-1,265
90

4,506

-1,048
243

3,794

-1,160
212

2,234

-383
178

3,661

-1,622
240

4,180

-1,255
394

6,298

-3,071
653

8,167

-3,577
487

4,774

-2,936
22

2,454

-2,375
863

 民間資本収支
政府勘定:
 軍事支出
 贈与(軍事を除く)
 政府資本,純

-760

-493
-2,274
-3,019

-1,062

-455
-1,897
-4,224

-1,079

-799
-3,894
-1,024

-470

-621
-4,997
-652

-1,175

-576
-3,484
-156

-805

-1,270
-3,035
-156

-948

-2,054
-1,960
-420

-205

-1,615
-1,837
-218

-1,382

-2,642
-1,647
93

-861

-2,901
-1,901
-310

-2,418

-2,949
-1,733
-629

-3,090

-3,216
-1,616
-958

-2,914

-3,435
-1,616
-971

-1,512

-3,107
-1,633
-353
4)

  小計
 サービス収入2)
 サービス支払2)

-5,786
152
-117

-6,576
136
-194

-5,717
202
-228

-6,270
230
-260

-4,216
241
-181

-4,461
350
-301

-4,434
410
-341

-4,670
617
-326

-4,196
604
-281

-5,112
597
-311

-5,311
477
-389

-5,790
717
-482

-6,022
748
-421

-5,093
794
-582

  サービス収支
 年金など移転支出

35
25

-58
-46

-26
66

-30
-109

-40
-79

49
-71

69
-128

291
-141

323
-129

286
-141

88
-135

235
-159

327
-182

212
-216

 政府勘定収支
 誤差・脱漏

-5,726
195

-6,680
936

-5,677
1,179

-6,409
775

-4,335
-21

-4,483
477

-4,493
601

-4,520
339

-4,002
173

-4,967
503

-5,358
543

-5,714
1,157

-5,877
488

-5,097
412

 流動性収支

1,261

4,567

1,005

175

-3,580

-305

-1,046

-2,152

-1,550

-1,145

-935

520

-3,529

-3,743

金融項目:
 流動ドル債務,増加(+)
 貨幣用金,減少(+)3)


-638
-623


-1,717
-2,850


525
-1,530


-11
-164


1,837
1,743


358
-53


1,425
-379


991
1,161


1,252
298


1,104
41


1,241
-306


278
-798


1,254
2,275


3,012
731

-1,261

-4,567

-1,005

-175

3,580

305

1,046

2,152

1,550

1,145

935

-520

3,529

3,743

U.S.Dept. of Commerce, Balance of Payments Statistical Supplement, rev.ed.,1963. p.2―4より作成。
1) 外国保有の流動ドル資産を除く。
2) アメリカ政府のサービス収入は、政府借款の収益その他サービス収入と1953年からは軍事用販売を含む。1952年までの軍事用販売は、商品輸出と政府サービス収入に含まれる。政府サービス支払いは、政府債務利払その他サービス支払を含む。
3) IMFに出資された貨幣用金(1947年には688百万ドル、59年には344百万ドル)は、その減少としては計算されていない。
4) 政府特別取引である外国によるアメリカ政府借款の返済前払434百万ドルを含む。  (楊井、石崎編 前掲書 pp. 259. 259)

第二表 アメリカの国際収支(流動性収支)

             

1960

1961

1962

1963

1964

1965

1966

1967

1968

1969

1970
民間経常勘定:
 商品輸出
 商品輸入


19,650
14,744


20,107
14,519


20,779
16,218


22,252
17,011


25,478
18,647


26,438
-21,496


29,390
-25,463


30,680
-26,821


33,588
-32,964


36,490
-35,830


41,980
-39,870

  貿易収支
 サービス収入
 サービス支払

4,906
7,005
-4,888

5,588
7,717
-4,956

4,561
8,407
-5,299

5,241
8,961
-5,798

6,831
10,335
-6,168

4,942
11,345
-6,792

3,927
12,240
-1,660

3,859
13,334
-8,521

624
14,522
-9,174

660
16,285
-11,411

2,110
18,150
-12,839

  サービス収支
 民間送金

2,117
-414

2,761
-424

3,108
-467

3,163
-563

4,167
-587

4,553
-659

4,580
-613

4,813
-837

5,348
-762

4,874
-860

5,311
-948

 民間経常収支
民間資本勘定:
 アメリカ資本,純
 外国資本,純

6,609

-3,878
339

7,925

-4,180
618

7,202

-3,426
162

7,841

-4,459
303

10,411

-6578
223

8,836

-3794
81

7,894

-4,333
2,452

7,835

-5,638
2,910

5,210

-5,383
6,788

4,674

-5,424
4,060

6,473

-6,886
4,348

 民間資本収支
政府勘定:
 軍事支出
 贈与(軍事を除く)
 政府資本,純

3,539

-3,087
-1,664
-1,104

-3,562

-2,998
-1,853
-926

-3,264

-3,105
-1,919
-1,094

-4,156

-2,961
-1,917
-1,661

-6,355

-2,880
-1,888
-1,676

-3,713

-2,952
-1,808
-1,598

-1,881

-3,764
-1,910
-1,534

-2,728

-4,378
-1,802
-2,421

1,405

-4,535
-1,707
-2,268

-1,364

-4,856
-1,644
-2,193

-2,538

-4,851
-1,739
-1,593

  小計
 サービス収入
 サービス支払

-5,855
836
-645

-5,777
947
-684

-6,118
1,322
-737

-6,539
1,391
-848

-6,444
1,468
-988

-6,358
1,624
-1,039

-7,208
1,748
-1,191

-8,601
2,213
-1,285

-8,510
2,513
-1,460

-8,693
2,825
-1,492

-8,183
2,773
-1,753

  サービス収支
 年金など移転支出
 政府の非流動債務

191
-214
215

263
-235
25

585
-245
402

543
-262
386

480
-279
467

585
-369
189

557
-367
80

928
-441
450

1,053
-406
1,913

1,333
-406
101

1,020
-462
99

 政府勘定収支
 誤差・脱漏

-5,663
-1,116

-5,724
-1,070

-5,376
-1,230

-5,872
-485

-5,776
-1,080

-5,953
-507

-6,938
-431

-7,664
-985

-5,950
-493

-7,665
-2,603

-7,526
-1,132

 流動性収支

-3,711

-2,432

-2,666

-2,670

-2,800

-1,335

-1,357

-3,544

172

-6,958

-4,7213)

金融項目:
 流動ドル債務,増加(+)
 準備資産2),減少(+)
 うち金移動


1,566
215
1,703


1,825
606
857


1,133
1,533
890


2,293
377
461


2,629
171
125


113
1,222
1,665


789
568
571


3,492
52
1,170


709
-880
1,173


8,145
-1,187
-967


1,377
3,344
787

 指摘しておかなければならないもう一つの点は、アメリカ経済の構造に関る問題である。戦後のアメリカによるドル援助が、ヨーロッパとアジアの経済復興を助けただけでなく、まさにそのドル支出によってアメrカの輸出増加がはかられたのであり、それによって大戦中に蓄積された過剰生産圧力が解消されたことについてはすでに指摘した。 #ところが、対外援助をとおしてアメリカ独占資本のために海外市場を拡大し、過剰生産力の露呈化を防止したというまさにそのことによって、全面的な設備更新による新たな生産力体系の形成が阻害されたのである。これによって老朽固定設備がかなりの規模で温存され、イギリスと並んでその後のアメリカ経済の成長を停滞に追いこむ根本要因の一つとなる# のである。
 たしかに戦後になると、大戦中は軍需優先のため抑制されていた民需部門の投資が拡大する。しかし、その軍需生産設備のほとんど、すなわち「約七五%までが民需生産に容易に転換できる性質のものであった。」(注1)
 「かくして、大戦中の、たとえばレーダー、ジェット機、原子爆弾、合成ゴム、合成樹脂、航空機用オクタン・ガソリンの製造設備は、戦後そのまま、電子工業や石油化学工業など新産業の設備として利用された。」(注2)
 このようにして軍需生産を中心とした、大戦中の重化学工業部門への投資は、民需部門への転換の過程で温存され、過剰設備をかかえることになったのである。
 だがいうまでもなく、この転換の過程をとおして、軍需部門で開発された技術が民需部門に移転され、さらに対外援助の形をとってヨーロッパや日本に伝播されていったのである。しかし軍需部門での開発投資に支えられた技術革新とその民需への移転と海外諸国への伝播の経路は、朝鮮戦争を契起に構造的に定着させられていった戦時財政構造と、産・軍複合経済構造によって拡大再生産されていくのである。だが今日、これはそれ自身の矛盾を発展させて危機の要因に転化しているといってよい。この点はさらに後にみるであろう。

 つぎに五〇年代であるが、この時期の特徴は四六〜四九年とちがって国際収支が年平均二三億ドルもの赤字に転化していることである。貿易収支の黒字が前の時期の年平均六九億ドルから二五億ドルへと半分以下に減少してしまっているし、世界総輸出に占めるシェアも一九四七年の三二・五%から一九五〇年、五五年の一八%に低下している。
 ただし五〇年代の特徴を明らかにするためには、一九五〇年と五八五九年とを五〇年代全体の中では別個にみておかなければならない。一九五〇年はそれに先行する四八〜四九年の景気後退の影響と朝鮮戦争勃発の年にあたっていて若干ちがった特徴を示しているし、また五八、五九年も、ヨーロッパ共同市場(EEC)の発足やヨーロッパ諸国の通貨の交換性回復が行われるなどで例外的な特徴を示しているからである。実際、一九五○年、五八年、五九年の国際収支の赤字中が極端に大きくそれぞれ三六億ドル、三五億ドル、三七億ドルとなっている。
 だがこれらの年を除いて一九五一〜五七年でみてみると、国際収支の赤字は年平均九億ドルと赤字中はずっと小さくなる。また貿易収支の黒字中も年平均三二億ドルと四六〜四九年の六九億ドルにくらべると半分程度に減少してはいるが、サービス等貿易外収支を加えた民間経常勘定は年平均で四七億ドルの黒字になっている。そして一九五一〜五七年では、国際収支の赤字総額六六億ドルはほとんどドルで支払われており、貨幣用金の流出はみられない。
 つまり五○年代の一般的特徴としては、国際収支は赤字に転化したといっても、それはアメリカの金準備との関係においても、六○年代の赤字とくらべてみても大きくはなく、世界経済におけるアメリカの地位やドルの信認を脅かすものではないということである。 #むしろ逆に、この赤字は諸外国のドルに対する需要の表現であり、通貨準備として蓄積されたものとみなければならない。したがって、この段階ではそれ――国際収支の赤字――はアメリカ経済の優位とドルの強さの反映であったといってよい。# とくにヨーロッパ諸国がドルを通貨準備として蓄積するために、対米貿易統制と為替管理を強化していったことが、この時期のアメリカの国際収支赤字の無視しえない要因になったと考えられる。
 ところが一九五八、九年では若千ちがってくる。国際収支の赤字が極端に増大していることにも示されるように、この両年は輸出が減少しているにもかかわらず、輸入が急増している。その結果として貿易収支の黒字が激減し、五九年はわずか一〇億ドル弱である。
 ドイツを中心とする西ヨーロッパ諸国は、五〇年代の経済復興過程をとおして、繊維、鉄鋼、自動車、電気、化学といった産業の競争力を強化し、世界市場におけるシェアを伸ばしてきたのてある。
 またこの両年の赤字総額七三億ドルのうち、四三億ドルだけがドルで支払われ、三〇億ドルは金で決済されている。そして五九年末にはアメリカの流動ドル債務総額は一九四億ドルに達し、金準備保有額一九五億ドルにほぼ等しくなった。五八〜五九年の国際収支赤字による流動ドル債務の急増によって、明らかにドル不足からドル過剰の段階に入ってきたことを物語っている。それによって通貨準備としてドルを蓄積し、一九五八年末に通貨の交換性を回復したのである。と同時にヨーロッパ諸国はこのような経済的発展を背景にしてEECを発足させるのである。この点で五八〜五九年は六〇年代のドル危機の時代への過渡期として位置づけられる。
 この時期――五〇年代――に関してとくに指摘しておかなければならないのは、ドル援助の体制がより一層「反共軍事体制」として完成されていくという点である。すなわち、表一からもわかるとおり、一九四六〜五〇年は経済援助が圧倒的であったのにたいして、一九五一〜五九年は経済援助は半減し、代って軍事援助が著しく増大している。さらにまた同じ期間にヨーロッパ向けの援助が減少して、極東、太平洋向けの援助が増大している。
 明らかに一九四九年のNATOの設置から朝鮮戦争を契機にして、 #両体制間の軍事的対立構造が世界経済の中に構造的に定着していくの# である。アメリカは、「一九五〇年以降五二年六月にいたる二ヵ年間に約九〇〇億ドルの軍事支出を目標に予算化をはかるとともに、NATO諸国に対して軍事費を増額するよう要請」(注3)した。
 イギリスは一九五一年〜五三年の三年間に四六億ポンドの軍事費を支出し、フランスも同三年間に二兆フランを支出した。そして、「フランスにおいては一九五一年度の軍事費七四〇〇億フランのうち一四〇〇億フランは、アメリカ援助の見送り資金によってまかなわれた」(注4)のである。このようにして朝鮮戦争以後、アメリカ経済においては、「“平時においても軍事支出がGNPの一〇%前後、連邦支出の六○%前後を占める準戦時体制が恒常的に定着した」(注5)といわれるように、戦後の世界経済は戦時財政構造と産・軍複合経済を、世界経済の中に構造化したのである。
 だがすでに指摘したように、まさにこのことによって、アメリカ経済の戦後生産力の形成過程は重大な影響をこおむるのである。すなわち、アメリカの生産力が再度軍需生産を中心に動員されることにより老朽設備の廃棄更新が遅らされることになり、アメリカ経済の停滞的構造を温存する結果になった。
 といっても一九五〇年代においてただちにアメリカ経済が停滞局面に入ったというのではもちろんない。逆にこの段階では一層の「経済の軍事化」をとおしてアメリカ経済の投資の拡大と成長がはかられていったのである。
 ただし表一から明らかなように、朝鮮戦争の時期にあたる一九四九〜五三年は、軍事支出を中心とした政府支出に圧倒的に依存して経済成長が実現されている。一九五〇〜五三年のGNPの増加分の五五%は軍事費を主体とした政府支出増の寄与によるものであった。このような形の景気上昇にひきつづいて一九五四〜五七年の個人消費支出と民間投資がGNP増をもたらしているのである。
 それでも一九五〇年代をとおしてみた固定投資中に占める機械・設備投資の比率は、主要国中最も小さく、老朽設備をかかえて生産力拡張投資は相対的に停滞しはじめているといえる。
 (アメリカ=三五・九%、西独=五二・六%、日本=五七・二%、フランス=四八・一%、イギリス=五一・七%、イタリア=四四・八%)
 ただし六〇年代に入ると再度設備投資は拡大する。

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