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輸出主導型への転換と海外進出 ##国際収支の帝国主義的構造への転換##
このようにして六五年以降、国際収支のパターンが、それまでの一貫して輸入が輸出を上回り、貿易収支の赤字を特需収入と外資の導入によって埋めてきたパターンから、輸入を上回る輸出の増加によってつくり出した貿易収支の黒字を、海外、とくに後進国にむけた援助や借款等の資本の輸出にふりむけていくパターンに転換したのである。これは明らかに帝国主義に特有のパターンである。 ##日本の輪出市場構成に占める東南アジアの位置## 一九六三年まで輸出では東南アジアが日本の最大の市場であり、構成比で三〇%を上回っていた。それが六五年以降になると、家電・カメラ・ミシン・合繊・鉄鋼・自動車など、重化学工業品に輸出競争力がつくとともに、アメリカ・EC市場への輸出が急速に伸びていった。それにひきかえ、東南アジアとの貿易のウェートは相対的に低下していった。 ##東南アジアに占める日帝の位置と極端な片貿易## 六五年以降、日本からみて対東南アジア貿易の比重は相対的に低下しているとはいえ、東南アジアの側からみると逆にそのウエートは急速に高まってきているのである。東南アジア全体の輸入に占める日本商品の割合は、六一〜六三年平均一四%から、六七〜六九年平均二三・一%へ、さらに七〇年には二六%へその比重を高めてきている。とくに、韓国、台湾、タイの輸入に占める日本商品のシェアは表3のように、ほとんど四割から五割を占めるに至っている。
##ドルに補完された日本の東南アジア貿易## ところで対東南アジア貿易におけるこの片貿易についてもう少しくわしくみると、さらに次のような特徴が明らかになる。すなわち石油、木材、ゴム、銅、鉄鉱石などの天然資源をもつ、インドネシア、マレーシア、フィリッピンなどは日本に対して出超、日本の入超になっているのである。その中が最も大きいのはインドネシア(石油・木材等)で、七一年には四億ドル近い日本の入超になっている。すなわち、インドネシアはその輸出市場の二分の一を日本に依存しているのである。マレーシア(木材と天然ゴム)は一億六、九〇〇万ドル、フィリッピン(木材、非鉄金属鉱)はわずか四、九〇〇万ドルとはいえ、いずれも日本の入超である。(注C)つまり、日本は東南アジアにおける資源保有国グループ(インドネシア、マレーシア、フィリッピン)に対して輸入超過で、その他の東南アジア諸国に対しては、大巾な輸出超過になっているという構造なのである。 アジアに向けた帝国主義的海外進出の強化 ##「もう一方の手で二倍近くを持ち帰る」――日本の借款## 貿易における大巾出超によって、東南アジアの富と資源を強奪しつづけてきた日本資本主義は、政府援助や借款を含む資本投下のあり方においても、露骨に帝国主義的性格を強めている。 ##土着民族産業を破壊した企業進出## 以上みてきたように、「援助」は、東南アジア諸国の工業化=経済援助に役立つ以上に、帝国主義国の輸出増進に役立っただけであり、「援助」をテコにして、帝国主義本国の大資本が、もう一方の手でそれ以上のものを持ち帰っていったのである。 |
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