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三、朴の二つの五ヶ年計画と日本帝国主義の侵略 四・一九革命後の南朝鮮内部における学生を中心とした南北統一へむかう流れを、暴力的に押しとどめて登場した朴は、アメリカの軍事力の庇護とともに、北部朝鮮に対抗できる経済力の建設をとうして、南北分断の固定化にもう一つの基盤を与えようとした。そのために「先建設・後統一」のスローガンをかかげ、日本帝国主義の経済力を動員しつつ、ただちに五ヶ年計画に着手した。しかもかなり大規模な工業建設を目標にして。
政府借款は有償・無償含めて、港湾、道路、輸送設備、電力等の産業基盤整備にあてられ、民間の資本投下を補完しているのであるが、肥料、化学品、繊維品、自動車部品、繊維機械などに関しては、政府供与の無償借款の中から、その半分近くが原資材供与として調達されている。 ところでこうした企業のほとんどが、十数家族の韓国財閥の支配下にあり、それが三井・三菱を中心とする、戦前において朝鮮経済を植民地的に支配してきた資本によっていま再びその系列下におかれつつあるという事実に注目しておかなければならない。 このようにして外資との結びつきを強めることによって膨張してきた韓国経済は、けっして総体としての「韓国経済」の均勢のとれた成長でもなければ、国内市場を基礎にした自生的な資本蓄積の成果として確立されているわけでもなく、いってみれば、それと分断されて形成された日米帝国主義の出島的構造がひとつのガン細胞のように韓国経済にとりついて、異常な膨張をとげてきているというのが真相である。この間の成長が、輸出産業の造成と輸出の目ざましい伸びによって主導されてきたことの内実は、まさにこの特徴をよく示している。 この点を繊維産業を例にすこしくわしくみてみよう。
また商業借款主導による朴の工業化政策は、元利償還額の巨額の累積をもたらした。韓国の元利償還金は、七一年―二億三〇〇〇万ドル、七二年―三億一五〇〇万ドル、七三年―三億四七〇〇万ドル、七四年―四億六〇〇万ドルの予定だという。これを商品輸出八億ドル、貿易収支の赤字一一億ドル、外貨保有高六億ドルといった数字と合せて考えてみると明らかに国家財政そのものが破産の淵にたっていることが明白である。 四、「国民経済」を侵蝕して拡大する輸出産業 すでにみてきたように、朴の二つの五ヵ年計画がつくり出したものは、国民経済を破壊し、侵蝕することによって、帝国主義本国の飛び島的構造を拡大することであった。そこで韓国労農人民にとっての「経済」
がどのように破壊され、侵蝕されてきたかをみなければならない。輸出産業を中心にこれまでみてきたことから明らかなことは、外資導入をテコにして肥大化していった輸出産業を基軸とする再生産構造と、国内市場の停滞と結びついている構造との間の分断とその払大再生産である。それは、急速度の経済成長の中の農業の停滞と危機として典型的にあらわれている。 五、収奪される労働者・農民の実態 ところで、この輸出の増進を軸に達成された工業化の過程で、一方では農業の停滞をつくり出したのであるが、同時に労働者階級のかなり急速な増加と都市への集中をもたらした(多くのスラム人口を含みつつ)ことも事実である。一九六五年から七一年の間に、就業人口は八五二万二子人から九七〇万八千人へ一四%増加した。そのなかで第一次産業では、就業者数は五〇三万七千人から四七〇万九千人へ五%減少し、構成比でも五八%から四八%へ低下している。ところが、鉱業、製造業を中心とする第二次産業では、八八万人から一三七万五千人へ、六年間で五六%も増加している。第三次産業では約四〇%。たしかにまだ相変らず農業人口が全体の五〇%近くを占めているとはいえ、かなり急速なプロレタリア化がすすんだことがわかる。
まず五〇〇人以上規模の労働者の賃金水準にくらべて、一〇〜五〇人規模のそれが六一%、五〜九人規模では四六%という低さである。また生産に従事する労働者の賃金は事務系労働者の三分の一にしか達していない。さらに同じ生産に従事する労働者でも常雇と臨時の賃金比率は一〇〇対六三である。したがって臨時工の賃金は事務系労働者の二〇%程度の賃金しかうけていないことになる。女子労働者の賃金はさらに低く、男子平均賃金の四六%であるという。(注F)表5から、生産従業員の八四%が中卒以下であり、全従業員の七五%を占める中卒以下の労働力が生産の主力を形成していることがわかる。また全女子従業員の九割が生産労働に投入されている。このような低賃金のうえに、ほとんどの労働者が十時間から十五時間の長時間労働を、ほとんどなんの特別手当もなしに強いられている。したがってその時間当り賃金はさらに低くなり、ほとんど日本の十分の一以下になる。
こうした驚くべき低賃金よりさらに低い所得水準の中に放置されているのが、人口の約五〇%を占める農民とその家族なのである。農業所得は、都市生活者一世帯当りの所得のわずか六〇%にすぎないという。収入の六〇%を米の販売に頼らなければならないのに朴政権による低米価政策によって、その市場価格は、国際価格(一俵=六○キロ当り二万二〇〇〇ウォン)の半分以下に押えられている。ところが工業製品の価格は上る一方で七三年から七四年にかけて、肥料は平均三〇%、配合飼料二五・五%、澱粉四二%(以上一二・四告示)、農薬は二五・二%、セメントは三四・二%(以上二・五告示)の値上げとなった。そのうえ、すでにみたように輸出促進のための工業化政策の結果、農業部門への投融資はほとんどなされず、いまだに三割から四割の水田が灌漑設備の不充分なままに放置されている。このような状況のなかで「農村では不在地主が増え、不動産投機があらわれている」という。そして“財閥”による土地の買い占めがすすみ、耕作地面積二反歩以上の土地の六〇%が耕作者の手を離れて、事実上の小作制が復活しているという。七〇年の『農業センサス』の結果で「全農家世帯数の三三・五%にあたる八〇万九〇〇〇世帯が借用耕作をしている」ことが明らかにされている。これは六〇年のセンサスに比べて、世帯数で三割以上の増加を示している。 |
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