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なお、このテキストはTAMO2さんのご厚意により「国際共産趣味ネット」所蔵のデジタルテキストをHTML化したものであり、日本におけるその権利は大月書店にあります。現在、マルクス主義をはじめとする経済学の古典の文章は愛媛大学赤間道夫氏が主宰するDVP(Digital
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☆ 付録 バーゼルにおける臨時社会主義者大会の宣言
(一九一二年一一月二四―二五日)
インタナショナルはシュトゥットガルトとコペンハーゲンの両大会で、万国のプロレタリアートのためにつぎのことを反戦闘争の指導原理として確認した。
「戦争が勃発するおそれがあるので、加盟諸国の労働者階級とその議会代表者は、インタナショナル事務局の総括的活動に支持されながら、彼らに最も有効とおもわれる手段を適用することによって戦争の勃発を防止することに、全力をつくすべき義務がある。それらの手段は、階級闘争が激化し一般的政治情勢が激化するに応じて当然変化するものである。
それでもなお戦争が起こった場合には、すみやかな終結のためにつくし、戦争によってひきおこされた経済上および政治上の危機を、国民を揺りうごかすのに利用し、そのことによって資本主義的階級支配の排除を促進することに全力をあげてつとめることが、義務である」。
近時の諸事件はプロレタリアートにいままでよりももっと、その計画的な行動に最大の力と精力を付与する義務を課した。一方では、全般的な軍備拡張熱は生活手段のいっそうの値上りをもたらし、そのことによって階級対立を先鋭化し、労働者階級のなかにおさえがたい憤激をもちこんだ。労働者たちは、不安と浪費のこの体制を制限したくおもっている。他方では、たえずくりかえしやってくる戦争の脅威が、ますます刺激的に作用している。ヨーロッパの諸大国民は、人間性と理性とにたいするこの攻撃が国民の利益という最もくだらない口実によって正当化されうることすらなしに、たがいに駆りたてられるはめに、たえずおかれている。
すでに今日までに恐ろしい惨禍をまねいてきたバルカンの危機は、もし拡大すれば、文明とプロレタリアートにとって最もおそるべき危険となるであろう。それは同時に、破局が大きいのに賭けられる利益は微々たるものにすぎないという歴然たる対照をなすので、世界史の最大の非行となるであろう。
それゆえ本大会は、万国の社会主義政党と労働組合が戦争に反対する戦争において完全な一致をみていることを、満足をもって確認する。
万国のプロレタリアがいっせいに反帝国主義闘争に立ちあがり、インタナショナルの各支部が自国の政府にプロレタリアートを反抗させ、国民の世論をあらゆる好戦欲に反対して動員したことによって、万国の労働者の大規模な協力が生じ、この協力はすでにいままでに、脅かされた世界平和を救うのに非常に大きな貢献をした。世界戦争の結果プロレタリア革命が起こりかねないという支配階級の懸念が、平和の重大な保障であることがわかった。
したがって大会は社会民主主義諸党にたいして、目的にかなうと諸党におもわれるすべての手段をもってそれぞれの行動をつづけるべきことを要求する。大会は、各社会主義政党のこの共同行動において、それぞれの特別任務をつぎのように指示する。
バルカン半島の社会民主主義諸党は一つの困難な任務をもっている。ヨーロッパの列強は、あらゆる改革を系統的に妨害することによって、トルコ国内に耐えがたい経済的、国民的および政治的状態が生じるのを促進したが、このような状態は必然的に反乱と戦争にみちびかずにはおかなかった。バルカンの社会民主主義諸党は、このような状態を王朝とブルジョアジーのために利用することに反対して、英雄的な勇気をもって、民主主義的連邦という要求をかかげた。大会はこれら諸党に、その賛美すべき態度を固守することを要求する。大会は、バルカンの社会民主主義勢力が戦後に、おそるべき犠牲をもってあがなわれたバルカン戦争の成果が、バルカン諸国の王朝や軍国主義や膨張欲のあるブルジョアジーによって彼らの目的のために悪用されるのを防止するために、全力をあげることを期待する。
しかしとくに大会はバルカンの社会主義者に、セルビア人、ブルガリア人、ルーマニア人、ギリシア人のあいだの古い敵対関係が復活するのに反対するだけでなく、現在もう一つの陣営に立っているバルカン民族、すなわちトルコ人とアルバニア人にたいするどんな迫害にも反対することを、勧告する。したがってバルカンの社会主義者は、これらの民族のどのような権利剥奪ともたたかい、荒れくるう民族的排外主義に反対して、アルバニア人、トルコ人、ルーマニア人をふくむすべてのバルカン民族の友好を宣言すべき義務をもっている。
オーストリア=ハンガリー、クロアチアとスロヴェニア、ボスニアおよびヘルツェゴヴィナの社会民主主義諸党は、ドナウ君主国のセルビア攻撃にたいする各党の有効な反対行動を、全力をもってつづけるべき義務をもっている。武力をもってセルビア人から戦争の諸成果をちばい、この国をオーストリアの植民地に変え、王朝の利益のためにオーストリア=ハンガリーの国民自身を、また彼らとともにヨーロッパのすべての国民を、最大の危険にひきずりこもうとする計画に、いままでとおなじく今後とも抵抗することは、それら諸党の任務である。それと同様に、オーストリア=ハンガリーの社会民主主義諸党は将来においても、オーストリア=ハンガリー王国の版図内でハップスブルグ家の支配する南スラヴ民族地域のために民主主義的自治権が獲得されるように、たたかうであろう。
オーストリア=ハンガリーの社会民主主義諸党ならびにイタリアの社会主義者は、アルバニア問題に特別の注意をはらわなければならない。大会はアルバニア民族の自治権を承認する。しかし大会は、自治の美名のもとにアルバニア人がオーストリア=ハンガリーとイタリアの支配欲の犠牲とされることに、抗議する。大会はそのことのうちにアルバニア人自身にたいする危険を見るばかりでなく、遠くない将来にオーストリア=ハンガリーとイタリアとの平和がやぶられる恐れをも見る。民主主義的バルカン連邦の自治的構成員としてのみ、アルバニア人は真に独立の生活を営むことができる。だから大会はオーストリア=ハンガリーとイタリアの社会民主主義者にたいして、アルバニア人を自国の勢力範囲に入れようとするそれぞれの政府のいかなる企てともたたかい、そしてオーストリア=ハンガリーとイタリアとの平和的関係の確立のためにそれぞれの努力をつづけることを、要求する。
大会はロシアの労働者の抗議ストライキを、ロシアとポーランドのプロレタリアートがツァーリの反革命のくわえた打撃から立ちなおりはじめたことをしめすものとして、大きな喜びをもってむかえる。大会はそこに、ツァーリズムの犯罪的陰謀に反対する最も強力な保障を見いだす。このツァーリズムは、自国の諸民族をむごたらしくたたきふせ、バルカン諸民族をも何回となく裏ぎって彼らの敵の犠牲に供したすえに、いまや、一方では自分自身にとっての戦争の結果をおそれ、他方では自分自身がっくりだした民族主義運動の急進展をおそれて、そのあいだを動揺している。しかしツァーリズムがいまやふたたびバルカン諸国民の解放者をよそおいはじめるとしたら、それは、この偽善者的なロ実のもとに、血ぬられた戦争のうちにバルカンでの優位をふたたび奪取しようとするためにほかならない。大会は、ロシア、フィンランド、ポーランドの強くなった都市と農村のプロレタリアートが、この虚構をひきさき、ツァーリズムのどんな好戦的冒険にも反対し、アルメニアにたいしてであれ、コンスタンティノープルにたいしてであれ、ツァーリズムのどのような陰謀ともたたかい、ツァーリズムにたいする革命的解放闘争の再開に全力を集中するであろうことを、期待する。ツァーリズムこそはヨーロッパの全反動勢力の希望であり、民主主義の最も凶暴な敵であって、全インタナショナルは、ツァーリズムによって支配されている諸民族を解放にみちびくことを、その最も気高い任務とみなさなければならない。
しかしインタナショナルの行動の内部での最も重要な任務をになうのは、ドイツ、フランス、イギリスの労働者階級である。現時点においてはこれら諸国の労働者の任務は、それぞれの政府にたいして、オーストリア=ハンガリーにもロシアにもどんな援助もあたえず、バルカン紛争へのどんな干渉もさしひかえ、絶対的中立をたもつことを、要求することである。セルビアとオーストリアの港湾争いのために三つの指導的な大文明民族のあいだに戦争が起こるようなことがあれば、それは犯罪的な狂気のさたであろう。ドイツとフランスの労働者階級は、秘密協定によってもたらされた、バルカン紛争へ介入するというなんらかの義務が存在するのを、承認することはできない。
しかし事態がさらにすすんでトルコの軍事的崩壊が近東におけるオスマンの支配を動揺させるようなことになったら、イギリス、フランス、ドイツの社会主義者の任務は、まっすぐに世界戦争にみちびきかねない近東侵略欲に全力をあげて反対することである。大会は、大ブリテン国とドイツ国とのあいだの人為的につちかわれた敵対を、ヨーロッパの平和にたいする最大の危険とみなす。
そして大会は、この対立を調停しようというそれら両国の労働者階級の努力を歓迎する。大会は、海軍拡張の休止と海上捕獲権の廃止とについてドイツとイギリスのあいだに協定がむすばれることを、この目的のための最良の手段とみなす。大会はイギリスとドイツの社会主義者に、そのような協定のための扇動をつづけることを要求する。
一方におけるドイツと他方におけるフランスおよびイギリスとの対立を克服することは、世界平和にとっての最大の危険を除去することになり、この対立を利用しているツァーリズムの権勢を動揺させることになり、オーストリア帝国のセルビア侵略を不可能にして平和を確保することになるであろう。だからとりわけこの目標にインタナショナルの努力を向けなければならない。
大会は、社会主義インタナショナル全体が外交政策にたいするその諸原則の点で一致していることを確認する。大会は万国の労働者にむかって、資本主義的帝国主義にプロレタリアートの国際的連帯の力を対置することを要求する。大会はすべての国家の支配階級にむかって、資本主義的生産様式がもたらした大衆の貧困を戦争行為によってさらにひどくすることのないように警告し、おごそかに平和を要求する。諸国政府は、ヨーロッパの現状と労働者階級の気分にかんがみれば、自分自身にとっての危険なしには戦争をひきおこすことはできないことを、わすれないがよい。また諸国政府は、独仏戦争がその結果としてコンミューンの革命的爆発をともなったこと、日露戦争がロシア帝国の諸民族の革命的力を始動させたこと、また陸海軍備拡張がイギリスと大陸で階級衝突をかつてなかったほどに激化させ大規模なストライキをひきおこしたことを、おぼえているがよい。もし諸国政府が、世界戦争という凶行を思いつくだけでも労働者階級の憤激と反逆を呼びおこさずにはおかないことを理解しなかったら、それは狂気のさたであるち。プロレタリアは、資本家の利潤や王朝の野望のために、また外交的秘密協約のために、たがいに撃ちあうようなことを、犯罪だと感じる。
もし支配権力が正常な発展の可能性をたちきり、そのことによってプロレタリアートを絶望的な行動に駆りたてるにいたったなら、彼らのまねいた危機の結果にたいして彼ら自身が全責任を負うべきであろう。
インタナショナルは、この危機を防止するためにその努力を倍加するであろう。それは、ますます語勢を強めてその抗議の声をあげ、ますます精力的にますます広範にその宣伝をおこなうであろう。大会は国際社会主義ビューローに、ますます大きな注意をはらって諸事件をあとづけ、なにが起ころうともプロレタリア諸党のあいだの結合を維持し強化すべきことを、委任する。
プロレタリアートは、現時点において人類の全将来の担い手であることを自認する。
あらゆる民族の繁栄は大量殺害と飢餓と疫病のあらゆる災禍によって脅かされているが、この繁栄が破壊されるのを防止するために、プロレタリアートはその全精力を傾けるであろう。
万国のプロレタリアおよび社会主義者よ、かくて大会は諸君につぎのように呼びかける。この決定的な時点で諸君の声をあげよ! あらゆる形式で、あらゆる場所で諸君の意志を告知し、議会で力いっぱい諸君の抗議を申したて、大挙して大示威運動に結集し、プロレタリアートの組織と力が手中にもっているあらゆる手段を利用せよ! 諸国政府がプロレタリアートの油断ない情熱的な平和意欲をつねに注視するようにさせよ! こうして搾取と大量殺害の資本家的世界に、平和と諸民族の友好のプロレタリア的世界を対置せよ!
一九一二年一一月二六日付『フォルヴェルツ』第二七六号に発表
ディーツ出版社版の『帝国主義論』ドイツ語訳の付録
(一四〇―一四四ページ)に再録されたテクストから翻訳
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